この記事では、看護学生なら知っておきたい実習での報告の仕方について紹介します。
実習中の人もこれから実習に行く人も、実習を成功させたいという思いはみんな同じ。
そこで今回は、実習の中でも1番緊張すると言っても過言ではない指導者さんへの『報告の仕方』について紹介します。
報告は苦手意識をもつ方が多いと思いますが、緊張のあまり報告に失敗してしまい、その日の実習が台無しになるなんてことも。
報告における大切なポイントを知り、悔いのない実習を送れるようにしましょう。
1.看護学生なら誰もが通る『指導者さんへの報告』とは?
指導者さんへの報告とは、『学生がどのような行動をとっているか』を指導者さんが理解するために存在しているものです。
学生が指導者さんに報告をすることで、指導者さん学生の動きを把握し、指導ができるようになります。
その指導によって、学生はケアの修正や追加、実習の学びを深めることへと繋がっていきます。
また、実際に指導者さんへ報告するタイミングには、以下のようなものがあります。
- バイタルサイン測定の前後
- 看護ケアの前後
- 患者さんの急変時
- 患者さんと病室でコミュニケーションを取る前後
- 午前・午後の報告の時間(休憩前や実習終了時)
上記の他にも実習先の病棟や施設によっては、決められた報告のタイミングがあります
このように様々なタイミングで指導者さんへの報告を行いますから、苦手意識は無くしておいて損はしません。
次に、的確な報告の仕方を身に付けるためにどのようなポイントに気をつけるべきか見ていきましょう。
2.看護学生が上手な報告の仕方をするための3つのポイント
普段が、人から説明を受ける際に、相手の話を聞いて『説明がわかりやすい人だな』と感じたことはありませんか。
そのような場合、相手はあなたに話を理解してもらえるよう、何らかのポイントを抑えているはずです。
報告も同じで、『わかりやすい報告だな』と相手に思ってもらい、かつ報告内容を理解してもらうためにもいくつかのポイントを抑える必要があります。
ここでは、以下の3つのポイントを紹介します。
それでは、1つずつ詳しく見ていきましょう。
2-1.声かけのタイミングに気をつける
まずは、声をかけるタイミングを考えましょう。
指導者さんは、学生が受け持っている患者さん以外にも何人かの患者さんを担当している場合があります。また、学生指導以外にも業務を抱えていることも。
そのため、報告の前には「今、お時間はよろしいでしょうか。」と都合をうかがいましょう。
万が一、今は忙しくて無理であると言われた場合は「都合の良い時間をお伺いしてもいいですか」と予定を合わせることが大切です。
しかし場合によっては、あなたの伝えたい情報は、患者さんの状態が急変しており、早急に伝えなくてはならないといった急を要する報告であるかもしれません。
その場合は、「申し訳ありません、急ぎの報告です。」と伝えましょう。
いずれも報告ができる段階になった場合には、「○号室の△△さんを受け持たせていただいている学生の□□です。」と自身の情報も忘れずに伝えましょう。
指導者さんも複数の学生を担当していることが多いですから、情報を誤って伝えないためにも、患者さんの報告の前に自分自身の情報を伝える必要があります。
2-2.報告内容の優先順位に注意する
報告の機会は、バイタルサインの前後やケア後などと様々です。
いずれの報告でも、報告内容は以下の順を心がけるのがポイント。
- 客観的事実
- 優先順位の高い内容
- アセスメント
上記の順で報告し、『現状がどのようになっていて、どうする必要があるのか(どうしたいのか)』という報告の流れを作りましょう。
そうすると、報告を聞く側は聞き取りやすく、理解しやすいものとなります。
逆に、事実に対するアセスメントを毎度述べれば、いくつもあるアセスメントの結果、どんな看護や対応が必要になってくるのかがまとまらず、わかり辛くなってしまいます。
2-3.報告内容をメモにまとめておく
内容を整理するために、報告する内容をメモにまとめましょう。
せっかく頭の中で報告内容がまとまっていても、緊張しすぎて何を報告するべきかわからなくなってしまっては、本末転倒です。
大切なのは、『上手く報告すること』ではなく、『正確に報告すること』です。
メモのまとめ方としては、箇条書きでおよその流れを書く、またはどうしても心配であれば台本のように書いてもOK。
実際、看護師の報告の際も必要事項はまとめて用紙に書き、報告していることが多いです。
自身に合うメモのまとめ方を探してみましょう。
3.看護学生の報告の仕方|バイタルサインを報告する時の良い例・悪い例
報告は事実を伝えるだけでは不十分です。
指導者さんは看護学生が事実から何を考え、その結果からどのように介入や観察をしようとプランを立てているかを知りたいと思っています。
報告時にバイタルサインの数値を伝えることはもちろんですが、他にも腸蠕動、呼吸音等…必要に応じてみなさんは観察をします。
それには必ず理由があるはずです。
その理由を指導者に説明することを意識すれば良く、難しく考える必要はありません。
下記に報告の悪い例と良い例を記載しました。
この項を全て読んでからどこが悪いのかどこが良いのか考えてみてください。
虫垂炎で開腹手術を行った患者。クリニカルパスが適応されている。本日は術後3日目で経過は良好である。腹腔ドレーン挿入中。安静度は歩行可、患者自身もトイレまで移動できている。
はじめに、報告の悪い例から見ていきましょう。
3-1.報告の悪い例
バイタルを測定してきました。体温は36.3度で発熱は見られていません。脈80回/分、血圧124/66mmHgと循環動態異常なしです。SpO2 98%で呼吸状態も良好です。
腹部の聴診をした結果、腸蠕動音が聞こえており問題ないと思います。
また、ドレーンより淡黄色の廃液がありましたが、段々と量が減っているので問題ないと思います。
創部も確認しましたが、滲出液の量も少なくなって来ていると患者も訴えており経過良好です。
患者さんはドレーン抜去することについて不安を訴えていましたが、明日で術後4日目なのでクリニカルパスにはドレーン抜去をすると書かれていました。そのため明日にドレーン抜去をするかもしれないと患者さんには伝えたいと思います。
3-2.報告の良い例
14:00にバイタルを測定しました。体温36.3度、脈80回/分、血圧124/66mmHg、SpO2 98%、肺雑音/左右差ありません。
また腸蠕動音あり、腹腔ドレーンは淡黄色で本日現在までに10mlの廃液量でした。
バイタルは正常値で問題ありません。ドレーンの廃液の色も、徐々に血性でなく廃液も減っており術後縫合不全や感染等の合併症もみられていないことが考えられます。
明日は術後4日目のため、クリニカルパスでは腹腔ドレーンの抜去が予定されています。このまま問題がなければ予定通りドレーンが抜去されることが考えられます。しかし今日の訪室時に、患者さんが「まだ廃液が出ているのにドレーンを抜くのか」と不安を訴えていました。そのため廃液量にしたがってドレーンが不要になってくることやドレーンを挿入しておくことのリスクを説明し、患者の不安に対応する必要があると考えました。
[adcode]
4.【おまけ】看護の現場でよく使われるSBAR(エスバー)法とは?
SBAR(※エスバー)とは緊急時の報告において効果的なコミュニケーションを取るためのツールのことを言います。
もともとはアメリカ海軍の潜水艦乗組員が使用していた方法で、それをアメリカの医師が医療に取り込んだのがはじまりです。
潜水艦内、海中の狭いスペースでの緊急事態ですから、落ち着いて、ゆっくりと正確に情報が伝わらなくては命取りです。
同様の状況が、医療の現場の日常にもあることを想像するのは容易でしょう。
スケールには次の4つの項目があります。
- S:状況(Situation):患者がどんな状況か、今何が起きているか
- B:拝啓(Background):これまでの経過は簡単にまとめるとどうなっているか
- A:アセスメント(Assessment):状況からどのようなことが考えられるから
- R:提案(Recommendation):相手に何を依頼したいか
緊急時の報告の際にこのスケールに上から当てはめていくと、『正確に、漏れなく、事実をわかりやすく』相手に伝えることができます。
もう一度見直してみるとSBARは『客観的事実→アセスメント』という流れになっています
緊急時でなくとも、実習で看護学生が指導者さんに報告をする場でも利用できるスケールです。
ここまで報告の仕方について説明をしてきましたが、SBARに沿って情報を整理するのも良いです。
※スケールの4項目の頭文字を取ってSBAR(エスバー)と呼んでいます。
5.まとめ
報告上手になれば、指導者さんだけでなく指導教員や実習メンバーともスムーズなコミュニケーションが図れ、コミュニケーションエラーの防止にもなります。
その結果、実習に取り組みやすくなることに繋がるでしょう。
適切で正確な報告をすると言うスキルは、近い将来、看護師として臨床に出た際に何よりも身につけなくてはいけません。
実習で報告が苦手な方でも大丈夫です。
学生のうちはその練習期間ですから、失敗しても落ち込まずにトライしてください。
臨床に出ている看護師の実際の報告を聞いて、その技を盗んでみましょう。
[adcode]